騒音制御工学会講演会

2017530日、騒音制御工学会の総会があり、その後の講演会に関東在住の当会関係者が3名出席して、講演を聞いてきました。予想どおりの内容でしたが、その要約をお知らせいたします。

 

講演会講師

・環境省行木美弥氏

・青山学院大学特任教授佐藤敏彦氏

 

佐藤敏彦氏は公衆衛生(特に疫学)の専門家で、数少ない医学系研究者として長年、以下の環境省各委員会や消費者庁消費者安全調査委員会(事故調)にも関わってきました。佐藤氏の主張はおそらく現在の騒音制御工学会の主流の考え方だと思われ、現在、調査中のエネファーム・エコウィルの報告書にも少なからず影響があるかと思われます。調査報告書が被害未然防止に役立つものであるようにという被害者の期待を裏切ることのないよう願っております。

  

    ①参照値について

・低周波音問題対応のための「手引」検討委員(H16年)

②風力発電について

風力発電施設の騒音・低周波音に関する検討調査業務(H25年)

・風力発電施設から発生する騒音等の評価手法に関する検討会委員(H25年)、

風力発電施設から発生する騒音等の評価手法に関する検討会委員(H28年)

 ③家庭用給湯器について

・消費者庁消費者安調査委員会専門委員(H24年~)

    ヒートポンプ(エコキュート)(H24年~H26年)

    コージェネ(エネファーム・エコウィル)(H27年~)

 

講演内容について要約 (資料配布はなし)

A "日本の環境行政" 環境省大気生活環境室室長 行木美弥氏

  騒音および低周波音の「苦情」に対する環境省の取り組みを紹介。

  

低周波音は平成19年頃から、急激に増加(全体の2%)。平成22年からは風力発電が「いろいろと話題になってきたので」、取り組みが始まる。

 平成28年に「風力発電施設から発生する騒音等の評価手法に関する検討会報告書(案)」公表。これからグラフを引用し、「知見」として以下を上げる。

1.     「低周波音は聞こえないレベル」

2.     「風車から低周波音はそんなに出ていない」

3.     「よって風車は低周波音の問題ではなく、騒音の問題」

4.     「騒音として耳につきやすい、スウィッシュ音でアノイアンスがある」

5.     「静かな環境だと煩わしさが上がる」

6.     「風車による景観の阻害や金銭的なことも煩わしさに影響する」

 

  風車騒音の指針についても、例の「+5dB」のグラフで説明。

 

B "騒音・低周波音の人への健康影響 わかっていること、わかっていないこと、今後調べるべきこと-"青山学院大学(社会情報学研究科特任教授)佐藤敏彦氏
     「講演要旨」
   1.     中世の医者(錬金術師でもある)パラケルススを引き、「毒かどうかは量の問題。曝露の量が問題」

2.     「今日は量の問題を強調したいのと、論文は批判的吟味が必要、ということを言いたい」

3.     「低周波音曝露による特異的な健康影響はあるのか。専門家と専門家以外の人の間に認知の差が生じている」

4.     「ネットで『低周波音は恐ろしい』と書いているところがあるが、本当にそうか」

5.     「名古屋大学の加藤氏[1] が、『低周波がマウスの平衡感覚を崩す』という論文を発表したが、これにも批判はできる。しょせん、動物の実験は人間のエビデンスにならない。人間の結果が優先される」

6.     「疫学的因果関係は、「関係ある」というのは大変だが、「関係ない」というほうが実はより大変」

7.     「低周波音の曝露量が少なければ、納得性が少ない。そんな量で心臓に影響があるか」

8.     「日本で2015年、鹿児島で風車環境の調査をしたが、回収データが少なくて話にならない」

9.     「疫学はあまり役に立たない。エコキュートで1万分の1の人が体調を崩す。コホート研究も断面研究も、人が少なすぎると有意差なしとなる」

10.  「低周波音に感受性の高い人がいるのか」

11.  「発達障害の人は音に敏感だ。こう言うと問題があるのかもしれないが、これは事実」

  

「今後調べることについて」、

1.     「なぜ個体差が出るのか。同じ家に住んでいても影響の出る人と、そうでない人がいるのか」

2.     暴露感覚が無い暴露レベルで身体に影響は起こりうるのか(内耳への影響の客観的評価)

3.     症例を集積して「高感受性」の有無と、その要因を調べる。

4.     「より洗練された、説得力のある疫学研究法が必要」

5.     「因果関係の説明はゴールではない。存在する健康問題の解消こそがゴール」

6.     「そのために『診断治療』という手段もある。言葉や精神安定剤だ」

7.     「社会を少しでもよくしようという気持ちをつねに持ってやりましょう」

 

「質疑応答」

Q  「弱者救済が必要。切り捨てるのはまずい、高感受性の人たちにアプローチするべき、という

社会情勢になっている。どう判断すればいいと思うか」

A  「非常に難しい。高感受性の正体が明らかになっていないのが困る。どうしたらよいか、分か

らない。」

 

 

参考資料

佐藤氏のお話の中で、『低周波がマウスの平衡感覚を崩す』という加藤氏の研究が引用されておりました。調べてみると
二つヒットいたしました。

  ・物理的環境ストレスが誘発する内耳障害 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjh/72/1/72_38/_article/-char/ja/
  ・環境ストレスと関連する聴覚系疾患の解析https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjh/70/2/70_100/_article/-char/ja/
 


[1]名古屋大学医学系研究科(環境労働衛生学)加藤昌志教授  


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