夏の「謹賀新年」

 
    当会「NPO法人STOP低周波音被害」は、2017年7月15日、神戸で勉強会を開きました。オープンスペースで公開セミナーという形で試みで行いましたが、残念ながら、当日お集まりくださいましたのは会員の方がほとんどでした。一般の方はちらりと中を覗いて立ち去っていく方ばかりで、次回からはもっと事前に広く告知する必要を感じました。

 勉強会後の交流会では、皆様それぞれの被害状況や交渉の進捗状況について語り合いました。その中で、エコキュートの被害者Aさんのことをご紹介したいと思います。Aさんは、今年元旦、最後の年賀状をお書きになり、できるだけ多くの人にこの被害を知ってほしいという思いで、そのコピーをいつも持ち歩いていらっしゃいます。


年賀状  




    A
さんは、被害にあって丸5年が経ち、今年は80歳におなりです。昨年やっと、自宅を離れ、避難されましたが、鋭敏になってしまったお体には、避難先でも平穏には過ごせず、わずかな期間に転居を重ね、それでも今尚お辛い毎日を送っていらっしゃいます。足がご不自由で杖を2本使って、地下鉄を乗り継ぎ、長時間をかけて勉強会に参加してくださいました。

 Aさん宅は2世帯住宅で、子世帯は早々に避難生活を始めていましたが、Aさんは心情的にご自宅を離れられず、被害を解決するために、紛争解決センターや、裁判所で調停を行ったものの、和解には至りませんでした。そして昨年、これを最後にと、隣家にエコキュートの撤去(費用は被害者負担)を再度、お願いしましたが、隣家は「(Aさん宅の)健康より、エコキュートが大事。エコキュートがかわいい」と言い放ち、Aさんはついにその地に留まることを諦め、自宅を後にすることになりました。Aさんご夫婦は、1995年の阪神大震災で自宅が全壊となり、新築した2世帯住宅で余生を送っていらっしゃいました。共に暮らしてきた親子2世帯はたった1台の機械で分断され、思い出の詰まった自宅を捨てざるを得なくなりました。

 

エコキュートの低周波音を苦に2世帯6人が自宅に住めなくなり、その結果、被害者宅が空き家になっても、独居の所有者は頑なにエコキュートの撤去を拒否しています。自分の設置した機器がそれほどまでに隣家を苦しめることに対し、良心の呵責など感じないのでしょうか。長年の隣近所の付き合いがありながら、なぜここまで「意地悪」としか思えない行為をするのでしょう。 

 この日、集まった被害者の方、皆に共通しているのは、機器所有者の傍若無人ぶりです。生活を破綻させられ、人生が狂わされてしまった被害者に対し、暴言を吐き、「文句があれば裁判したら。負けないよ。」と怒鳴る所有者です。こうした事態になると、人の心はここまで荒廃してしまうものでしょうか。

 

2014年冬の消費者庁消費者安全調査委員会のエコキュート調査報告書により、「エコキュートの稼働音が健康被害をもたらす可能性があると推測される」との見解が出されたにも関わらず、事業者はいまだに被害の存在を認めようとしません。

所有者は仮に被害を認めなくとも、隣家の窮状を思いやり、その解決のために、何らかの譲歩をすると言うのが人間本来の心ではないでしょうか。

所有者の権利には義務が、自由には責任が伴うはずです。機器の設置について、設置の権利と自由が有るならば、他人に迷惑をかけてはならない義務と責任が伴うのは当然では無いでしょうか。



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騒音制御工学会講演会

2017530日、騒音制御工学会の総会があり、その後の講演会に関東在住の当会関係者が3名出席して、講演を聞いてきました。予想どおりの内容でしたが、その要約をお知らせいたします。

 

講演会講師

・環境省行木美弥氏

・青山学院大学特任教授佐藤敏彦氏

 

★佐藤氏について
佐藤敏彦氏は公衆衛生(特に疫学)の専門家で、数少ない医学系研究者として長年、以下の環境省各委員会や消費者庁消費者安全調査委員会(事故調)にも関わってきました。佐藤氏の主張はおそらく現在の騒音制御工学会の主流の考え方だと思われ、現在、調査中のエネファーム・エコウィルの報告書にも少なからず影響があるかと思われます。調査報告書が被害未然防止に役立つものであるようにという被害者の期待を裏切ることのないよう願っております。
    ☆ 佐藤氏の経歴
  

    ①参照値について

・低周波音問題対応のための「手引」検討委員(H16年)

②風力発電について

風力発電施設の騒音・低周波音に関する検討調査業務(H25年)

・風力発電施設から発生する騒音等の評価手法に関する検討会委員(H25年)、

風力発電施設から発生する騒音等の評価手法に関する検討会委員(H28年)

 ③家庭用給湯器について

・消費者庁消費者安調査委員会専門委員(H24年~)

    ヒートポンプ(エコキュート)(H24年~H26年)

    コージェネ(エネファーム・エコウィル)(H27年~)

 

★講演内容について要約 (資料配布はなし)

☆A ”日本の環境行政” 環境省大気生活環境室室長 行木美弥氏

  騒音および低周波音の「苦情」に対する環境省の取り組みを紹介。

  

低周波音は平成19年頃から、急激に増加(全体の2%)。平成22年からは風力発電が「いろいろと話題になってきたので」、取り組みが始まる。

 平成28年に「風力発電施設から発生する騒音等の評価手法に関する検討会報告書(案)」公表。これからグラフを引用し、「知見」として以下を上げる。

1.     「低周波音は聞こえないレベル」

2.     「風車から低周波音はそんなに出ていない」

3.     「よって風車は低周波音の問題ではなく、騒音の問題」

4.     「騒音として耳につきやすい、スウィッシュ音でアノイアンスがある」

5.     「静かな環境だと煩わしさが上がる」

6.     「風車による景観の阻害や金銭的なことも煩わしさに影響する」

 

  風車騒音の指針についても、例の「+5dB」のグラフで説明。

 

☆B ”騒音・低周波音の人への健康影響 -わかっていること、わかっていないこと、今後調べるべきこと- 青山学院大学(社会情報学研究科特任教授)佐藤敏彦氏
     「講演要旨」
   1.     中世の医者(錬金術師でもある)パラケルススを引き、「毒かどうかは量の問題。曝露の量が問題」

2.     「今日は量の問題を強調したいのと、論文は批判的吟味が必要、ということを言いたい」

3.     「低周波音曝露による特異的な健康影響はあるのか。専門家と専門家以外の人の間に認知の差が生じている」

4.     「ネットで『低周波音は恐ろしい』と書いているところがあるが、本当にそうか」

5.     「名古屋大学の加藤氏[1] が、『低周波がマウスの平衡感覚を崩す』という論文を発表したが、これにも批判はできる。しょせん、動物の実験は人間のエビデンスにならない。人間の結果が優先される」

6.     「疫学的因果関係は、「関係ある」というのは大変だが、「関係ない」というほうが実はより大変」

7.     「低周波音の曝露量が少なければ、納得性が少ない。そんな量で心臓に影響があるか」

8.     「日本で2015年、鹿児島で風車環境の調査をしたが、回収データが少なくて話にならない」

9.     「疫学はあまり役に立たない。エコキュートで1万分の1の人が体調を崩す。コホート研究も断面研究も、人が少なすぎると有意差なしとなる」

10.  「低周波音に感受性の高い人がいるのか」

11.  「発達障害の人は音に敏感だ。こう言うと問題があるのかもしれないが、これは事実」

  

「今後調べることについて」、

1.     「なぜ個体差が出るのか。同じ家に住んでいても影響の出る人と、そうでない人がいるのか」

2.     暴露感覚が無い暴露レベルで身体に影響は起こりうるのか(内耳への影響の客観的評価)

3.     症例を集積して「高感受性」の有無と、その要因を調べる。

4.     「より洗練された、説得力のある疫学研究法が必要」

5.     「因果関係の説明はゴールではない。存在する健康問題の解消こそがゴール」

6.     「そのために『診断治療』という手段もある。言葉や精神安定剤だ」

7.     「社会を少しでもよくしようという気持ちをつねに持ってやりましょう」

 

「質疑応答」

Q  「弱者救済が必要。切り捨てるのはまずい、高感受性の人たちにアプローチするべき、という

社会情勢になっている。どう判断すればいいと思うか」

A  「非常に難しい。高感受性の正体が明らかになっていないのが困る。どうしたらよいか、分か

らない。」

 

 

★参考資料

佐藤氏のお話の中で、『低周波がマウスの平衡感覚を崩す』という加藤氏の研究が引用されておりました。調べてみると
二つヒットいたしました。

  ・物理的環境ストレスが誘発する内耳障害 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjh/72/1/72_38/_article/-char/ja/
  ・環境ストレスと関連する聴覚系疾患の解析https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjh/70/2/70_100/_article/-char/ja/
 


[1]名古屋大学医学系研究科(環境労働衛生学)加藤昌志教授  


         
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